お香のこと 沈香
沈香
人が作り得ない大自然が創造した、はかり知れない香り
仏教伝来と共に日本に渡った「香」
その代表が沈香です。
タイ・ベトナム・カンボジア・マレーシア・インドネシアにわたり、広く分布するジンチョウゲ科アキラリア属または、ゴリスチラス属の常緑高木です。
30mもの高さになり、葉は長楕円形・互生・革質で光沢があります。
沈香は、すべての沈香の木にできるものではありません。
数百本に一本程度、ごく稀に木の中の樹脂成分が集まり沈着・凝縮されたものが、時間の経過によって“沈香木”になります。
この沈着した部分だけを取り出したものが“沈香”です。
“沈水香”(水に沈む香)という意味から“沈香”と呼ばれます。
産地により香りが異なり、さわやかさ・苦味・甘味・辛味などが感じられます。
戦国時代の武将が、カブトに沈香を焚きしめて出陣したという話は有名です。
カブトの汗臭さやカビ臭さを抑えるためだけでなく、沈香の香りに鎮静作用があり、戦で高ぶる気を鎮めたといわれています。
産地による違い
沈香には大きく分けて、シャム沈香とタニ沈香があります。
商人用語が普及した言葉で、シャム沈香はベトナム・タイ・ラオス・カンボジア産、タニ沈香はマレーシア・インドネシア産の沈香を示す呼び名です。
タニ沈香は辛味が強く漢方薬などにも用いられ、シャム沈香は甘味があり御線香やお香の原料などに用いられます。
自然が創る造形美
沈香は、香りを楽しむと同時に、自然が創る形の美しさも楽しめます。
馬蹄、笹、ツメと文字通りの形で進物などにも使われています。
刻みにしたり、分割にしたり使い易い形に加工します。
また、その形貌や存在感ゆえに沈香の姿のままの物を床の間の置物等、装飾品としても古くから親しまれてきました。
彫刻・細工物
インドネシア産タニ沈香の塊を加工し、様々な彫刻や細工物が作られることがあります。最近はタニ沈香の大きな塊を採取するのが難しくなってまいりました。
そのため、適度な形・大きさの塊が見つかった時に、職人によって制作されます。
沈香を使用した製品
長川仁三郎商店では仕入れた沈香を粉末や刻みにして、お香メーカーへの卸や自社製品の製造を行っています。また、彫刻や細工が可能な沈香の塊の仕入れがあれば、数珠を作る職人や沈香の香炉や香合を作る職人に卸しております。